身体症状型不登校とは
「学校に行く日になると、急にお腹が痛くなる」
「朝になると頭が痛くて起きられない。でも夕方には元気そうにしている」
「病院で検査をしても、とくに異常はないと言われた……」
そんなご相談を、当センターでは数多くいただきます。
身体症状型不登校は、心の問題が「体の症状」となって現れる不登校です。
お子さんは決して仮病を使っているわけではなく、本当に体がつらい状態にあります。だからこそ、医学の知識と心理学の知識の両方からアプローチしないと、根本的な改善は見込めません。
ただ、難しいタイプではあるものの、適切な体制のもとで支援を受けていただければ、比較的短期間で改善に向かうことが多いタイプでもあります。希望を持って、これからお伝えしていく特徴をお読みください。
なぜ心の問題が「体の症状」として現れるのか
医師として、まず親御さんにお伝えしておきたい大切なことがあります。
それは、お子さんに出ている体の症状は、気のせいでも仮病でもなく、医学的にきちんと説明のつく現象だということです。
ここでは、心の負担が体の症状として現れる仕組みを、わかりやすくご説明します。
自律神経のバランスが崩れる
私たちの体には、意識しなくても勝手に働いてくれる神経「自律神経」があります。
自律神経は、活動モードの「交感神経」と、休息モードの「副交感神経」の二つに分かれていて、心臓の鼓動・呼吸・消化・体温・睡眠など、生命を維持するあらゆる働きをコントロールしています。
ところが、強いストレスが続くとこのバランスが崩れます。
すると、心臓の動悸、手足の震え、めまい、吐き気、頻尿、便通の乱れ、発汗、唾液の異常な分泌など、自律神経が司っているあらゆる体の働きに不調が出てくるのです。
身体症状型不登校のお子さんに見られる多くの症状は、この自律神経の乱れ(自律神経失調)として医学的に説明できます。
起立性調節障害(OD)——「朝に強く、夕方に弱まる」の医学的な正体
身体症状型不登校のお子さんに最もよく見られるのが、「起立性調節障害(OD)」と呼ばれる病態です。
これは思春期の子どもに多い自律神経の働きの不調で、立ち上がったときに脳への血流をうまく保てなくなる病気です。日本小児心身医学会も診断ガイドラインを公表しており、けっしてめずらしい病気ではありません。
起立性調節障害の症状は、身体症状型不登校の特徴とほぼ重なります。
- 朝なかなか起きられない
- 立ちくらみ・めまい
- 倦怠感・疲れやすさ
- 頭痛・腹痛
- 動悸・吐き気
- 午前中に強く、午後から夕方にかけて軽くなる
この最後の特徴がとても大切です。
「夕方になると元気そうに見える」のは、サボっているからではありません。自律神経の働きが午後にようやく追いついてくる——その医学的な現象なのです。
加えて、慢性的なストレス下では、本来朝に多く分泌されて目覚めを促す「コルチゾール」というホルモンのリズムも乱れがちになります。これも朝の不調を強める一因と考えられています。
ですから、起立性調節障害は「気のせい」でも「気合の問題」でもなく、自律神経とホルモンのレベルで、本当に朝の体が動かない状態なのです。「怠けている」と誤解しやすい症状の代表例ですが、医学的にはきちんと説明のつく病態です。
脳と腸はつながっている(脳腸相関)
近年の医学研究で明らかになってきた重要な事実があります。それが「脳腸相関」と呼ばれる、脳と腸が神経やホルモンを通じて密接に連絡を取り合っているという仕組みです。
緊張するとお腹が痛くなる、不安があると下痢になる——これは多くの方が経験的に知っていることですが、医学的にも実証されています。
「過敏性腸症候群(IBS)」という診断名がついている状態がまさにこれで、検査では異常がないのに、ストレスによって本当に腹痛・下痢・便秘が起こるのです。
身体症状型不登校のお子さんに腹痛や便通の乱れが多いのは、この脳腸相関がはっきりと関わっています。
痛みは「気のせい」ではなく、本当に感じている
頭痛や腹痛について、「検査で異常がないのに、なぜそんなに痛がるのだろう」と感じる親御さんもいらっしゃいます。
ここで知っておいていただきたいのは、ストレス下では脳の痛みを感じる仕組みそのものが変化するということです。
慢性的なストレスにさらされると、脳の中で痛みの信号を増幅させる回路が活性化し、本来であれば気にならない程度の刺激でも、強い痛みとして感じるようになります。
つまり、お子さんが訴える頭痛や腹痛は、脳のレベルで本当に強い痛みとして体験されているのです。「気のせいでしょ」「我慢しなさい」では、決して解決しません。
だからこそ、医学と心理学の両面からのアプローチが必要です
ここまでお伝えしたように、身体症状型不登校で出る症状は、
- 自律神経の乱れ
- 起立性調節障害(OD)による朝の不調
- 脳腸相関による消化器症状
- 脳の痛覚処理の変化
など、医学的にきちんと説明のつく身体の反応です。
ですから、心理的なサポートだけでは届かない部分があります。
体に出ている症状をきちんと医学的に見立て、必要に応じた医療的な対応を行いながら、同時に心の側にもアプローチしていく——この「体と心の両輪」があってはじめて、身体症状型不登校は改善に向かいます。
医師・看護師・理学療法士といった体の専門家と、不登校専門心理士という心の専門家がチームを組んでいる支援機関でなければ対応が難しいのは、こうした医学的な背景があるからなのです。
身体症状型不登校の4つの特徴
さまざまな身体の症状が、特に朝に強く出ます
身体症状型不登校のお子さんには、次のようなさまざまな身体の症状が現れます。
- 朝起きられない(過眠)
- 夜眠れない(不眠)
- 頭痛
- 腹痛(下痢や便秘)
- めまい
- 発汗
- 動悸
- 発熱
- 頻尿
- 吐き気
- 倦怠感
- 食欲不振
- 手足の震え
- 唾液過多
- 呼吸困難
これらの症状の特徴は、朝に強く出ることが多く、夕方に近づくにつれて弱まっていくということです。
朝はぐったりして起き上がれなかったお子さんが、午後になると少し元気になり、夕方には普通に話したりテレビを見たりしている——この落差に、親御さんが戸惑われることも少なくありません。
「夕方になったら元気だから、本当はサボっているのでは……」
そう感じてしまう親御さんもいらっしゃいますが、これは決して仮病ではありません。心の負担が体に現れる、お子さんなりの精一杯のSOSなのです。
また、症状は学校がある日に起きることが多いのも特徴です。土日や長期休暇には軽くなり、平日の朝になるとまた強く出る。重度の場合は休日にも症状が出ることがありますが、多くの場合「学校に行く時間帯」と症状の出方が連動しています。
非定型不登校に多く見られます
身体症状型不登校で、もうひとつ知っておいていただきたいことがあります。
それは、定型不登校でも身体症状が出ることはあるけれども、圧倒的に非定型不登校のお子さんに身体症状が現れることが多いということです。
つまり身体症状型不登校は、多くの場合、非定型不登校と重なって現れます。
非定型不登校のお子さんが、その内側にある問題(ストレス耐性の低下、考え方の偏り、自己肯定感の低下など)を抱えきれなくなったとき、それが体の症状として表に出てくる——そう捉えていただくと、わかりやすいかもしれません。
ですから身体症状型不登校への対応は、単に体の症状を抑えるだけでは不十分です。
身体症状の背景にある「非定型不登校としての側面」にも、同時に向き合っていく必要があります。
体と心は深くつながっています。だからこそ、両方を見ていける体制が欠かせないのです。
平均2ヶ月弱で改善することが多い不登校です
身体症状型不登校と聞くと、「お子さんの体に出る症状」だけに気を取られて、深刻に考えすぎてしまう親御さんもいらっしゃいます。
ですが、ここで希望を持っていただきたいことがあります。
当センターの臨床経験からお伝えすると、身体症状型不登校は平均して2ヶ月弱で改善に向かうことが多い不登校です。
もちろん、これは適切な体制のもとで適切な支援を受けていただいた場合の数字です。
医学面・心理学の両方からアプローチし、お子さんの状態を見ながら段階的に整えていくことで、思ったよりも早く改善が見込めるタイプの不登校なのです。
「体の症状が出ている=深刻で長引く」と思い込まず、まずは正しい体制のもとで支援を受けていただくこと——それが一番の近道になります。
医師や看護師など、他分野の専門家との連携が必須です
医師として、親御さんにぜひお伝えしておきたい、最も大切なことがあります。
身体症状型不登校は「体に症状が出ている」不登校です。
ですから、心の専門家である不登校専門心理士だけでは、対応に限界があります。
体の症状の見立て、必要に応じた医学的な知識、お子さんの体調に合わせた段階的な支援——こうしたことは、医師や看護師、理学療法士など、体の専門家が同じ支援機関の中にいてはじめて可能になります。
ここが、定型不登校との大きな違いです。
定型不登校は不登校専門心理士のみで対応できますが、身体症状型不登校は、医師や看護師、理学療法士など他分野の専門家が所属する支援機関でなければ、対応することができません。
「他のカウンセリング機関に通っているけれど、なかなか体の症状が改善しない」
そういうお声を、私たちは何度もお聞きしてきました。それは、心理的なアプローチだけでは身体症状型不登校には届かないからなのです。
当センターでは、医師・看護師・理学療法士・不登校専門心理士がチームを組み、お子さんの体と心の両面を支える体制を整えております。だからこそ、身体症状型不登校にも対応することができるのです。
身体症状型不登校は「正しい体制で支援すれば、短期間で改善できる」不登校です
ここまでお読みいただいた親御さんに、医師として、ぜひ覚えておいていただきたいことがあります。
- お子さんの体の症状は仮病ではなく、心の負担が体に現れた本当のSOSです。
- 体と心の両方からアプローチすることで、症状は段階的に和らいでいきます。
- 当センターの臨床経験では、平均2ヶ月弱で改善に向かうことが多いタイプです。
- 医師・看護師・理学療法士・不登校専門心理士のチーム連携によって、根本から支えていけます。
「うちの子の体の症状は、いつまで続くのだろう」
「病院でも異常がないと言われ、どこに相談すればいいかわからない」
そんなふうに思い詰めていらっしゃる親御さんこそ、まずはひと息ついて、ご相談ください。
身体症状型不登校は、適切な体制さえ整えば、必ず改善していきます。
まずはお気軽にご相談ください
お子さんに毎朝のように体の症状が出て、学校に行けない——そんな日々が続くと、親のあなたも心身ともに疲れ果ててしまいます。
それは決して、親が至らないからではありません。身体症状型不登校は、親の努力だけでは解決できないタイプだからです。
当センターには、医師・看護師・理学療法士、そして30年の臨床経験を持つ不登校専門心理士が在籍しております。お子さんとご家族の状況をていねいにお伺いし、医学と心理学の両面から、解決までの道筋をご一緒に考えていきます。
「病院では異常がないと言われたが、子どもは本当につらそう」
「すでに他のカウンセリング機関に通っているが、体の症状が改善しない」
そうした段階でも、まったくかまいません。
当センターのLINE公式アカウントから、お気軽にご相談ください。
お子さんが体も心も軽やかになって学校に戻れる日を、ご一緒に目指してまいりましょう。
不登校カウンセリングセンター
理事長 中山和子(医師)
